……これで、お詫びのつもりか!

離れた場所でなにやらコピーしている上倉を軽く睨んでそうツッコみつつも、その詰めの甘すぎるお詫びの品は、さっきまでの鬱鬱とした気分を少し軽くしてくれた。

社長からの呼び出しが、本当に“クビ”っていう話だったら、上倉に楽しい送別会してもらえばいいや。

そんな風に諦めをつけると、私は午前中の業務に取り掛かるために、さっき見ていたメールの画面を閉じようとする。

けれどやっぱり気になって、マウスを操作する手が止まってしまった。

会社で扱う商品とその甘いマスクから、社内で“ハチミツ王子”と呼ばれている、我が社の社長。

前社長である彼の父が病のため長期入院をしなければならず、三十三歳という若さで社長になった彼だけど、その経営者としての手腕は誰もが認めている。

ただ、やり方がちょっと強引で……。

気の合わない側近を降格させたり、涼しい顔してトンデモない売り上げ目標を打ち出したりするから、彼の実力は認めても、彼自身のことは気に食わないって言う人は結構いるみたい。

……そんな人から、じきじきの呼び出しだなんて。

クビの覚悟はなんとなくできたけど、緊張することには変わりない。

私はそれを騙すように上倉のくれたお菓子を口に放り込むと、今度こそメール画面を閉じるのだった。