王子様はハチミツ色の嘘をつく



シャワーを浴びたあと、本当にサイズのぴったりだった淡いピンク色のルームウエアに着替えて、寝室に移動した。

部屋の中心より少し窓際に寄せて、背の低いフロアベッドが置いてある。

大きさはダブルだろうか。黒のヘッドボードには携帯の充電器や経営に関する本がいくつか置いてあり、少し生活感がある。

そこに私のスマホも置かせてもらうと、私はベッドの上に乗った。

自分のベッドではないから、疲れているからといってダイブするようなことは遠慮して、そうっと身体を横たえてみると、社長の香りがした。


「やっぱり、眠れる気がしない……」


シーツも、手繰り寄せた掛布団も、枕も。当たり前だけど全部が彼の香りを纏っていて、それに包まれて眠るなんて、ドキドキして……。

いつになっても眠気がやってきそうにないので、何気なくスマホに手を伸ばすと一件のメールが来ていた。

こんな深夜に誰……?と思いながら確認すると、送り主は実家にいる弟、浩介(こうすけ)だった。

製造業で夜勤のある仕事をしている弟は、昼夜が逆転することも珍しくない。

とりあえず納得して本文を見ると、私は驚いて上半身を起こし、目を瞬かせた。


【姉ちゃんと仲良かった蜂谷華乃ってひとが、あの豪邸に帰ってきたらしいよ。昼間姉ちゃんを訪ねてうちに来たって、母さんが言ってた。だから、近いうちにこっちに来て、姉ちゃんの方から顔見せなさいって】


華乃が……! なんてタイムリーなの! 彼女には聞きたいことがいっぱいある。

それにしても、親しくしていた期間は短いはずなのに、わざわざ私に会いに来てくれただなんて、嬉しいな。

子供の頃、お人形のように可愛らしかった華乃は、どんな美人に成長しただろう。