「まあ、戸惑うのも無理はありません。きみは今日一日で、自分を取り巻く状況が一変して疲れてもいるでしょう。でも、近いうちに必ず……僕なしじゃ生きられなくしてあげますよ」
考え方によっては甘いセリフに聞こえないこともないし、胸が高鳴っているのも事実。
けれど、ドキドキの反対側にはそこはかとない恐怖もあって、このまま彼に堕ちてもいいのかどうか、迷ってしまう。
社長は、本当に私の初恋の人なんだよね……?
胸の内で問いかけながら彼を見つめると、彼はふいと目を背けてソファから立ち上がった。
「……今日は、もう休んでください。リビングを出てすぐの扉がベッドルームです。その隣のバスルームも好きに使って頂いて構いません。僕は書斎で仕事をします」
「え……あの! 私、泊まるつもりなんて……!」
「どうしてですか? 明日から早速きみは秘書としての仕事を覚えなければならないのです。自宅に帰る暇があれば、少しでも多く眠って、力を蓄えた方がいいでしょう」
思わず自分の腕時計を確認すると、もうすぐ日付が変わってしまうところ。
これから帰るとなると、確かに時間はロスするけど、いきなり男の人の家にお泊りだなんて、無理……!
「あの……着替えも何もありませんし、何より私、ここにいたら余計眠れないと思うんですけど」

