王子様はハチミツ色の嘘をつく



徐々に頬が熱くなり、胸の高鳴りが鳴りやまないなか、困ったように彼を見つめると、社長は表情を変えずに告げる。


「……あんまり出来が悪いようだと、“修業”というより“調教”にシフトしていく可能性がありますが、構いませんか?」


その言葉を聞いた瞬間、ぞくりとしたものが背中を駆け抜けた。

い、今の社長……なんか怖い……! しかも調教って! いくらなんでもそんなのおかしいでしょう!

怯えたように身をすくませる私に、彼はにっこりと微笑む。


「……いい反応です。これは苛め甲斐がありそうだ」


い、いじめ……甲斐……?

なんだか、社長からものすごく恐ろしいオーラが漂っているように見えるんですけど……。

そう思うのと同時に、胸の中に小さな違和感が生まれる。

過去に会った東郷社長は、すごく優しい人だった。
容姿だけでなく、中身も“王子様”っていう表現がぴったり当てはまるような。

でも、今目の前にいる彼ときたら、見た目は確かに王子様だけど、中身は完全なるサディストだ。

……成長の過程で、性格が歪んでしまったのだろうか。