小さなキッチンに冷蔵庫、電子レンジ、自動販売機も備わった広めの休憩室。

テーブルと椅子のセットも数組あって、お弁当を持参してきた社員がお昼休みに集う、憩いの場所。

けれどそれ以外の時間は人があまり来ないせいか、噂話と悪口の巣窟となることも多い。

そこにたまたま居合わせて、何度気まずい思いをしたことか。

でもとりあえず、今日のところは誰もいないみたい。
ナイスタイミング。

ほっとしながら、インスタントコーヒーの蓋をくるくると回していたときのこと。


「……芹沢さんて、社長の大事にしてる“アレ”割っちゃったんでしょ?」

「そうそう、もう他の庶務課員にまで火の粉がかかったらどうしようって心配で~」


げ……タイミング、最悪だったみたい。


「あ」


扉を開けた後輩たちが、“やばー今この人の悪口言ってたんだよね”という気まずさをわかりやすく顔に貼りつけて、私を見る。

もうちょっとうまく取り繕いなさいよ、と余計なことを思いつつ、彼女たちににっこり微笑んで、コーヒーの瓶を差し出した。


「飲む? ついでに入れてあげるけど」

「……や、自分でやりま~す」


こういうの、お局っぽいなとか思わなくもないけど、若い後輩たちの発言に一喜一憂してたら感情の無駄遣い。

淡々とコーヒーを入れ、湯気の立つマグカップを持って、彼女たちの脇をすり抜けていこうとしたとき。


「……責任とって、早く辞めればいいのに」