王子様はハチミツ色の嘘をつく



たくさん飲んでたくさん笑って、実家を出たのは夜十時ごろ。

最寄り駅に向かって、蒸し暑い夏の夜を静也さんと歩いた。


「いいご家族ですね。美都がまっすぐに育った理由がよくわかる」

「そ、そうですか?」

「ええ。僕もああいう家庭で育てば、もう少しましな性格だったかもしれませんね」


冗談交じりに語った静也さんに、思わずくすくす笑ってしまう。

そのとき、後から私たちを追い抜かそうとしている二人組がいた。静也さんがさりげなく私の肩を引き寄せ、彼らとぶつからないようにしてくれたのだけれど……。


「あ、美都! と、静也さん!」


すれ違いざまにこちらを振り向いたのは、見知った女友達の顔。

そして彼女と並んで歩いていたのは……。


「華乃……! と、創希さん⁉」


どうして二人が私の地元で一緒にいるの?

華乃は実家が近いからわかるけど、創希さんがここにいる理由が謎だ。


「あらまーお二人お揃いで。静也がスーツ、ってことは、もしかして俺らと同じことしてきたのかな?」


俺らと同じこと、って……? そういえば、創希さんもスーツ姿だけど。

状況が呑み込めず瞬きを繰り返す私に対して、静也さんは何か思い当たったようだ。