母お手製のごちそうがテーブルに並んだダイニングには、久しぶりに顔を合わせる家族の面々が揃っていて、静也さんのイケメン度と王子的キラキラオーラに圧倒されていた。


「初めまして。美都さんとお付き合いさせていただいております、東郷静也と申します」


洗練された動作で挨拶をする静也さんに、両親も弟夫婦も声も出せずに見惚れている。


「あの……」

「あ、すすすみません! まさかこんなにいい男とは知らなかったから、びっくりしちゃってやーねぇ。座って座って?」


戸惑う静也さんに、ほほほ、と庶民には似合わない笑いで応えるお母さん。

席に着く私たちに、今度は弟の浩介が声をかける。


「姉ちゃん……その歳まで処女守ってきた甲斐あったね」

「な……余計な事言わないで!」


弟よ、それは家族の前でしみじみと言う台詞じゃない! 特にお父さんがショック受けちゃうよ!

ちら、とお父さんのほうをうかがうと、こんな時なのに新聞を広げて必死に聞こえてないふりをしていた。


「さあ、乾杯しましょうか」


お母さんが冷えた瓶ビールとグラスを運んできて、私と、それから弟のお嫁さんである志穂(しほ)ちゃんと手分けをして、皆のグラスにビールを注いでいく。

そして乾杯の準備が整うと、静也さんが畏まって話し出す。


「お父さん、お母さん。今日は、大切なお話が合って参りました」


き、きた……! お嬢さんをくださいっていうお決まりのアレだ……!

その場にいる静也さん以外の全員が、緊張して息をのむ。お父さんもさすがに新聞を読むのはやめて、神妙な面持ちで静也さんの言葉を待っている。