王子様はハチミツ色の嘘をつく



「……お疲れ様。すごく助かったよ、ありがとう」


コトリと上倉の机に湯気の立つカップを置いてそう言うと、彼は「いーえ」と笑いながら、頬杖をついて私を見る。


「美都さんに優しく労ってもらえるなんて、超感激」


……あ。また出た。美都さん。
私は照れ隠しに苦笑して、冗談っぽくこう返す。


「……おおげさ。っていうかそれじゃいつも優しくないみたいじゃない」

「んなことないですよ。しかし、こうやってちょっと近づけたなーと思った側から美都さんが異動しちゃうのは、やっぱ切ないっスね」


ど……どうした上倉。私がいなくなったら“切ない”だなんて……変な風に意識しちゃうのは、自意識過剰?

それに、やっぱり気になるのは……


「上倉……その呼び方……」

「あー、そこ突っ込みます? ずっと呼びたくて、でもいざとなったら俺チキンでさー……だから今日、すっげ勇気振り絞ってるんですけど」


立っている私を、下からすくいあげるように見つめてくる上倉。

んなっ……! やめてよ、そんな顔!

私、歳はアラサーだけど、男性に対しては乳幼児並みに免疫ないんだから!