「さりげなく僕を貶める発言をするのはやめてください。それと、せっかく用意したんですから、フレンチトースト、早く食べてみてください」
静也さんに促され、お母様がお父様の膝の上にお皿を置き、自分の分も手に持つ。
「……見た目は本当にそっくりよね、お父さん」
「まあな。でも、あの味に近づくのは至難の業だと思うぞ?」
半信半疑という感じで、ご両親がフォークで小さく切り分けたフレンチトーストを口に運ぶ。
ゆっくり咀嚼して、それからごくりと飲み込んだとき、お母様の瞳は潤んでいた。
「……本当に、あの味……なの?」
確かめるようにつぶやくと、もう一切れ口にするお母様。
きっと創希さんの味の再現が成功したんだ……!
心の中で感激する反面、黙ったままでいるお父様の反応が気になった。
「お父様、お味はどうですか?」
私は車椅子の目線にかがみこんで、彼の表情をうかがう。すると目に入ったのは、眉根を寄せて苦し気な顔をするお父様。
その一瞬で、私の体中に嫌な予感が駆け巡った。
「あなた……?」
様子がおかしいと気づいたらしいお母様が心配そうに肩に触れると、お父様の身体は前に向かって傾き始めた。
一瞬のことなのに、私の目にはまるでスローモーションに見えた。

