王子様はハチミツ色の嘘をつく



『ちょっと飲みすぎじゃないのか?』

『あなたが飲まなすぎよ』

『いや、だって……こんなに楽しい記憶、酔いで忘れたりしたら後悔するだろ?』


宿泊しているホテルでワインを飲んでいたらしいお母様だけど、お父様にそう言われると渋々グラスを置いた。

そして、拗ねた顔をしている一方で、観念したようにコクンと頷く。

その仕草が可愛かったのだろう、お父様がお母様の髪をわしゃわしゃっと散らした。


映像を見ていた若い女性社員が「うらやましい……」と切実そうにつぶやいたり、二人をひやかす口笛なんかが会場に響く。

始めこそ照れていたお母様も、昔を懐かしんでいるのか目を細めていて、少し涙ぐんでいるようにも見える。

サプライズ、二つ目も成功かな。あとは、創希さんの腕を信じるしかないよね……。


そうこうしているうちに、ご両親の新婚旅行映像は終わりに近づき、エンディングの音楽が流れる。

その優し気なメロディーに乗せて、司会者が口を開いた。


「ただ今ご覧いただきました、お二人の新婚旅行。その滞在中に、お二人が一番印象に残っているというひと皿を、今日は当時の味そのままに再現いたしました」


映像が終わると、落とされていた照明がふたたび明るくなり、映像が流れている間にテーブルの上に並べられたお皿に、みんなが注目した。