美都を捜し始めて十数分。手がかりのないままあちこち移動していると、パーティー会場に続く廊下から分岐した、あまり人気のない通路に、二人の男女がいた。


「だから……俺は俺の意志でそう決めた。若菜とはあと少しでサヨナラだ」

「そんな……」


うちの社員だろうか。会話の内容は別れ話のようで、深刻そうなふたりの間に割って入るのは気が引けるが、今はなりふり構っている場合じゃない。


「話し中に失礼。この辺りで、僕の秘書である芹沢を見かけませんでしたか? 今日の彼女はシャンパンゴールドのドレスを着ているのですが……」

「しゃ、社長……っ」


僕の声に反応して振り向いた二人のうち、女性のほうはあからさまにぎょっとして目を見開いていた。

僕はあまり社員に好かれているほうではないから当然の反応かもしれないが、少し気になるな。


「美都さんが、どうしたんですか?」


女性を追求しようとしていた僕に、今度は男のほうから声をかけてきた。

美都さん……。下の名前で呼んでいるということは、かなり親しい仲なのか?

一瞬つまらない嫉妬心を抱きそうになったが、平静を装って答える。


「彼女を捜しているんです。さっきからずっと姿が見えなくて……」

「俺も捜します! 二人のほうが効率いいですよね! あ、俺、庶務課の上倉です」


なぜか異様な食いつきをみせる上倉という男に、頭の中で何かが引っ掛かった。

庶務課の上倉……いつか美都とふたりで食事をしていた男じゃなかったか。

美都を下の名前で呼んでいることも気になるし、協力してもらって正解なのだろうか。

僕はしばし悩んでいたが、その間に彼の隣の女性がどんどん俯いてくるのが目に入り、首をかしげる。