「現在、秘書課の者たちが手分けして彼女を捜しています。最後に彼女と会ったのは創希様だそうですが、社長を呼びに会場を出て行ったあとのことはご存じないと」

「携帯は?」

「繋がりません」


……いったいどうして。

広いホテルとはいえ、式典で使用する場所は限られているし、午前中から会場と廊下を行ったり来たりしていた美都が、今更迷子になるとは考えにくい。

急に体調が悪くなって、どこかで休んでいる?

それか、誰かに呼び出されてホテルの外に? いや、どちらにしろ、連絡もなしに姿を消すなんてあり得ないだろう……。

いくら頭を捻っても不可解で、胸がざわざわと落ち着かない。

今日まで、式典に向けて奔走し、僕の“親孝行”についても協力を惜しまず、両親のことを考えてくれて、当日を心待ちにしていた美都。

彼女がこのタイミングで式典をすっぽかすなんてことがあるはずがない。

何より僕は、彼女がいないと困る。

今日のこの日は、美都と一緒に迎えることに意味があるのに……。

眉根を寄せて考え込む僕心配そうに見つめていた深見は、意を決したようにしっかり僕を見つめると、こんな提案をした。


「社長、パーティーの開始時間を少し遅らせて、まずは芹沢さんを捜しましょう」

「いや……でも、それでは社員にも、ホテルの関係者にも大きな迷惑が」

「言い訳は僕がなんとかします。……社長は、幼いころに一度しか会ったことのなかった芹沢さんを、もう一度見つけました。それは、運命以外の何物でもないと思うんです。だから、社長自ら彼女を探せば、見つかるような気がしてならないんです」