「こっちです」


くるりと方向転換した彼女は早足で私を先導する。廊下をしばらく歩いてあまり人気のない場所に来ると、彼女はひとつの扉の前で足を止めた。

そこには“staff only”と書かれていて、宿泊用の部屋や私たちの利用しているパーティー会場と違い、重たそうな鉄扉だ。


「ここは?」

「空調機械室です。会場のエアコンがちょっと調子悪いみたいなので、ここに異変がないか見てきてほしいって」


エアコンが不調……それはまずいかも。ずっとバタバタしていたから部屋の温度まで気が回らなかった。


「ありがとう、若菜さん。ちょっと見てみるね」


ギイ、と重たい音を立てて扉を開けてみると、意外に部屋は狭くて、ちょうど一畳分くらい。

暗くて窓もなく、かなり閉塞感のある部屋だけれど、早速異変を見つけるため中に入り、壁に触れて電気のスイッチを探した。

そうしているうちに、ゆっくりと扉が閉まっているような気がして、扉の前にいる若菜さんに声をかける。


「ゴメン、電気のスイッチがまだ見つからないから、開けといてもらえるかな?」


あれ……返事がない。