「言いたいことあるなら俺に言えよ。……芹沢さんは関係ないだろ」
席に着いたまま、うつむいている若名さんに、上倉が厳しい口調で言う。
この二人、何か揉めてるの……?
若名さんはしばらく何も言わなかったけど、膝の上でぎゅっと拳を握ると、怒ったような泣いているような、震える声で言った。
「だっ、て……っ! 上倉さん、ずっと、本気なのに……、この、女……っ!」
ええぇー………!あの若名さんが私を“この女”呼ばわりするとは、ちょっとショック。
いつもおしとやかで可愛い彼女はどこへ行っちゃったの?
「……あのなぁ。俺の気持ちなんかどーでもいいんだよ。芹沢さんには芹沢さんの考えがあって――」
「それでも上倉さんは、この女を好きなんでしょう!?」
叫ぶように放たれた彼女の声は、庶務課中に響き渡った。
今まで見て見ぬふりをしていたであろう同僚たちも、何事かと仕事の手を止め、顔を上げてこちらの様子を窺っている。
っていうか、私も……今のは何事か、全くわかんないんだけど。
この女=私、なんだよね……? 上倉が、私を好き……?
まさか、そんなこと……
ぽかんとしながらも二人を見守っていると、上倉が静かにため息を吐き出して、それから申し訳なさそうに苦笑して、私を見た。
「……すっげぇカッコ悪いタイミングですね。コレ」
「……? ちょ、ちょっと待って。全然、意味が……」
「やっぱり気づいてなかったんですか。……まぁでも、今言っとかなきゃ王子に奪われて終わりになっちゃうしな……」
表情からスッと笑顔を消して、まじめな顔になった上倉。
なんとなく、なんとなくだけど……心臓が何かを察して、私の胸をうるさく叩く。
「上倉……?」
なんで、そんなにまっすぐ私を見るの……?
いつもと違う彼の様子にごくりと息を呑んで、彼が言葉を継ぐのを待っていると。

