「さっき病院の母から連絡がありました。今日は朝から父の体調が良いようなので、予定通りパーティーに来てくれるそうです。もちろん、長時間では体の負担になりますから、少しの間ですが」


心なしか静也さんが嬉しそうに見えて、私の胸もじんわりとあたたかくなる。


「よかった……。静也さんからのプレゼント、喜んでもらえるといいですね」

「どうでしょうね。母はともかく、父が素直に喜びを表現するところなどあまり見たことがないので、自信はありません」


苦笑しながら語った静也さん。

……どれだけ厳格なお父様なんだろう。

社長だったころの彼を遠巻きには見たことがあるけれど、静也さんと親しくなってからはまだ一度もお会いしていない。

今日のパーティーが無事終わったら、紹介してもらえることにはなっているけど……。


「大丈夫です。きっと、静也さんの気持ち、伝わります」


私は、静也さんが今日を迎えるまでの準備にどれだけ熱心だったかを知っているから、そう信じてる。

小さくガッツポーズを作って励ますと、優しく微笑んだ彼に頭を撫でられた。

ああ……こうしてると、さっきまで忙しかったのが嘘のように癒される。

しかし、幸せに浸っていられたのもつかの間。

私のポケットでスマホが鳴り、その電話で私は会場に呼び戻されてしまった。


「じゃあ……行きますね」


ちょっと寂しい気持ちになりながら踵を返すと、後ろからがしっと腕をつかまれた。

振り向くと、静也さんはそのまま私の手を引いて、自分の胸にぎゅっと抱きしめた。