「もちろん、ゆっくり眠ってください。……その、欲求どうこうは忘れて大丈夫ですので」


後半は言いにくそうにぼそぼそとつぶやいた私。

さっきの“お仕置きしてほしい”的発言を自ら蒸し返してしまったようで気まずいけれど、静也さんは私をからかうことなく、頬に笑窪をつくりながら微笑んでくれた。


「ありがとう。きみを、抱き枕にしても?」

「えっ。いいです、けど……狭くないですか?」


ドキッとしながら問いかけたけれど、彼は許可を待たずにがっちりと私のウエストを捕まえていて、すぐに静かな寝息を立て始めた。

……可愛い。きっと、一人では眠れないくらいに不安だったんだ。


「おやすみなさい、静也さん」


私はふっと笑みをこぼして、彼の隣で目を閉じる。

こんな静也さんの一面を、お父様は知らないんだろうな……。

もちろん静也さんも知られたくないだろうけど、なんだかそれって寂しい気がする。

でも、余計なお世話なのかな……。

いろいろ考えているうちに私も眠くなり、静也さんのぬくもりを感じながらうとうととまどろむ。

お父様が百周年記念式典に無事出席できて、静也さんがご両親を思う気持ちが伝わればいいな――。

薄れゆく意識の中で、私はそれだけを強く祈っていた。