「……少し、話す時間ある?」


……また、タメ口になってますよ、後輩くん。なんて、今はそんなこと言ってる場合じゃないか。

しばらく迷ってから、私は首を縦に振った。

これから休憩を取るつもりだったから、時間ならたっぷりあるし、創希さんと会っていた日の誤解を解くチャンスかもしれない。

不機嫌さを漂わせる上倉の背中についていき、辿りついたのは同じフロアにある資料室だった。

背の高い棚に囲まれた狭い部屋で上倉と向き合うと、彼はすぐに口を開いた。


「美都さんはさ、東郷の血筋なら誰でもいいわけ?」


これって、創希さんのことを言っているんだよね……。

私はどうやってうまく説明しようかと、言葉を探す。


「……上倉には前に、社長が初恋の人だって話したことがあるよね。でも、それが本当は、あの日プラネタリウムで一緒にいた、東郷創希さんだったの」


何を言っても、言いわけのように聞こえるかもしれない。

それでも、上倉に誤解されたままっていうのはいやなんだ。


「それを知ったあとで、創希さんにデートに誘われて……社長に聞いたら、“行っても構わない”って言われたの。それがなんだか突き放されたような気がして、切なかった。だから私、当てつけみたいに創希さんと……。
でも信じて、本当に好きなのは社長なの」