彼女が隣にいれば、なんだってできる気がする。

会社の利益を増やすことはもちろん、消費者から愛される商品を作り続けること。

創希とともに手掛ける、フレンチトースト専門店を軌道に乗せること。

僕を疎ましく思っている役員たちに、前社長であった父を超えたと認めさせること。

それから……百周年記念式典で、両親を喜ばせること。


「美都。……少し、手伝ってほしいことがあります」


不思議そうに首を傾げた彼女に、僕はひとつの計画を話して聞かせた。

式典のその日まで、父が元気でいる確証はない。

けれど、社長である僕が会社の大事な節目を放り出して、両親のためだけに動いたとしたら、父も母も喜んでくれない。

医者の言う余命というのは一種の目安で、実際にはそれ以上生きることも、またそれよりも短く命を終えてしまうこともあり得る。

それなら、僕は父の生命力を信じて、前者に賭ける。

いま、そう思えるのはきっと……美都、きみがいるから。



「静也さん……それ、すごくいいと思います。ぜひ、手伝わせて下さい!」


僕の計画を聞き終えると、美都は目を輝かせて賛成してくれた。


「ありがとう。まず、必要なものは――」


具体的なことまで話し始めてしまうと時間が足りず、僕たちはベッドを抜け出すと話しながら慌てて出勤の準備をした。