真剣に相談する僕に対し、父は“それくらいのことで情けない”と僕を突き放し、何の助言もくれることはなかった。そして――。


“俺が死ぬまでに、俺を超えて見せろ。信頼は自分で勝ち取るんだ。決して俺の真似ではなく、お前のやり方でな”


いまだ僕の心に深く突き刺さっている、この一言も、そのときに言われたものだ。

それから僕は、“僕のやり方”を模索しながら会社を成長させることに心を砕き、寝る間も惜しんで仕事をした。

その結果、ある程度の功績は出すことができ、社長という役職に見合う発言力も備わってきたように思う。

しかし、まだ父を超えたとは言い難く、疲労も蓄積してくると、僕は少し弱気になってきた。

そして父の命のタイムリミットが近づくにつれ、その気持ちはどんどん膨らむ。

いっそ、“あなたが時間をかけて築いてきたものを、超えることなどできない”と白旗を上げた方が楽になるかなどという考えも浮かんできた頃……。

僕は、父をかいがいしく看病する母の姿を見て、思ったのだ。

父が今まで頑張って来れたのは、いつでも自分を支えてくれる母の存在があったから。

僕にも、そんなかけがえのない存在があれば……まだ、踏ん張れるのではないかと。