加えて、一生遊んで暮らすつもりなのも、僕には許せなかった。

秘書として忙しい父を支える母をカッコいいと思っていたし、何より幼いころからの父の厳しい教育を受けていた僕は、怠惰なやつが大キライなのだ。

こんなやつと結婚するなんて、冗談じゃない。

そう思っても、父に反抗することまではできず、つまらない気持ちになっていた時に、目の前に美都が現れたのだ。


僕が一瞬で惹かれたのは、優しそうでもあり、頼りなげにも見える目元。

まっすぐでやや下がり気味の眉に、大きくも小さくもないアーモンド形の瞳。

美都本人は“地味で特徴がない”と自分を卑下しているが、僕にはとてつもない美少女に見えたのだ。

……かわいい。素直にそう思うのと同時に、捻くれた僕の心もちくりと反応していた。

手始めに名前をからかってみると、彼女は途端に瞳を潤ませる。

僕の胸には、少しの罪悪感とそれ以上の優越感が生まれて、余計に彼女を泣かせてみたくなってしまった。

それがエスカレートしすぎた結果、僕は彼女を本気で泣かせてしまうばかりか、イトコである創希に、彼女の心をあっさりと持って行かれた。