「だから、その表情は男を煽ると何度言ったらわかるんですか……。でも、そういえばきみは初めてでしたね。ごめんなさい、少し、余裕をなくしていました。……ベッドに行きましょうか」


え、ええと……場所の問題ではないような……。

ソファから降りて寝室に向かおうとする彼についていけずにいると、振り向いた彼が私をエスコートするように手を差し出す。


「おいで」


――きゅん。

ああダメ、いつも意地悪されてばかりだったから、優しくされるとそのギャップにやられてしまう……。





結局、素直に寝室について行った私は、入り口の側で棒立ちになっていた。

窓の外はすっかり暗くなっていて、社長はリモコンで常夜灯だけをつけると、そのぼんやりとした明かりの中に浮かび上がるベッドの上にぎしりと腰かける。

今の彼の服装は、柔らかそうな白いシャツにシンプルな黒のパンツ。

素敵な人は、何を着ても似合うな……彼ならむしろ、服を着ていなくても……って、何を先走った妄想してるの!

ぺし、とおでこをはたいていると、社長が私を呼ぶ。


「……美都、挙動不審ですよ。恋愛においてはあれこれ考えるよりも、実地訓練が最も効果的ですから、早く始めましょう」