「じゃあ……五時、まで」


せめてもの抵抗でそんな制限を口にすると、創希さんはクスクス笑ってからうなずいた。


「小学生のデートみたいだけど、いいよ、了解。ではお姫様、そろそろ行きましょう」


先に立ち上がった創希さんに手を差し出されると、私はまたしても従順にその手をつかんでしまった。

今どき、小学生のほうが恋愛上手かもしれないよね……。

いい加減、戸惑ってばかりの優柔不断な自分に嫌気がさしてくるよ。


憂鬱な気持ちを持て余したまま、その後も創希さんとのデートは続いた。

ランチはお洒落なビストロ、そして午後は、車で少し移動した先のボーリング場で遊んだ。

創希さんといる時間は、普通に楽しかった、とは思う。

でも、やっぱりふとした時に無理して笑っている自分にも気がついていた。

約束の時間が近づいてくることを、無意識に心待ちにしている自分にも。





「……ごめんなさい。今日は、創希さんの貴重な時間、潰してしまって……」


五時を過ぎると、“家まで送るまでは許して”と、少し寂しそうな創希さんに頼まれて、私はまたいやと言えずに、助手席にちょこんと座っている。

一日を通してとにかく彼に申し訳ない行動ばかりだった私は、運転席の彼にひたすら謝っているところだ。


「全然気にしないでよ。俺に魅力が足りなかったってことだから」

「そんなことないです! 創希さんは、素敵な人です!」

「でも、付き合うのは無理、と」

「……っ。ごめん、なさい……」