数年後――
取り壊しが決まったゲームセンターを前に、あたしは懐かしい気持ちで見に来た。
「アレク……あたしね、大学生になったよ。いろいろ大変だけど……あたし、この世界で生きていく。頑張るから」
アレクが好きだったクッキーをそっともぐらたたきゲームの筐体に添える。クスリと笑うと、「アレクはもうお妃様がいるかな? たまにはあたしを思い出してるといいな」なんて呟く。
「にゃあ」とミケも懐かしむように鳴く。
「おまえだけだよね、一緒の思い出を話せるのも。今夜は刺身をあげるから、しみじみ2人で語り合おうか」
刺身と聞くと、現金なものでミケはごろごろと喉を鳴らす。そして。
《そうだな、サクラ。たくさん話そう》
そんなふうにミケが答えた気がした。
《さくら》
ふと、誰かに呼ばれた気がして振り返ると。やっぱり誰もいない。
「気のせいだよね。じゃあ、帰ろうかミケ」
あたしはミケを抱き抱えて思い出深い場所を後にした。
時折懐かしさに足を運んできたけど、これで本当に何もかもおしまい。
このお話は……。
だけど、まさか。
その夜にゲームの筐体が再び輝き始めるなんて、あたしは知らかった。
そして、アレクが最後に何を伝えたかったのかも――。
――必ず会いに行く……と。
(終わり)



