お猫様が救世主だった件につきまして





ふたつの手のひらが、壁越しに重なる。


涙を……流したくない。ちゃんとアレクの顔を見たいのに……笑顔を残したいのに。


「アレク……ごめんね、ごめんなさい」

「泣くなさくら……俺こそ……ガキみたいだよな。無い物ねだりしてる……こんな俺だからさくらに選ばれるはずもなかった」

「アレク、そんなことない……だってあなたは……」


ギュッ、と手のひらを握りしめる。


アレクが、微笑むのが気配でわかった。


「笑ってくれよ、さくら。笑ってさよならしよう」

「うん……」


涙を拭ったあたしは、精一杯の笑顔をアレクに向かう。


そして……


最初で最後のおねだりを、アレクにした。


「アレク……お願い……最後に……」


――して


あたしのお願いを、彼は笑って応じてくれる。


ふたつの顔が近づいて――


柔らかい感触を感じた瞬間、体がふわりと浮いた。


「ありがとう……アレク……さようなら……」


急速にあたしの体は浮上していく。


見慣れた懐かしい人たちが遠ざかる。


最後にアレクを見た時、彼の唇が何かを形作る。


そして――



フッと意識が遠ざかっていった。