お猫様が救世主だった件につきまして




あたしはそのまま、よろめきながらヒース司祭長のもとへ。

でも、耐えきれずに膝をつく前に。誰かがあたしを受け止めた。


その懐かしい薫りに……あたしは項垂れるしかなかった。


「ごめんね……アレク。勝つって約束……守れなくて」

「いい! お前があんなことをしたのは……帝国のプレイヤーを守るためだったんだろう? 誰だってわかってる!」


アレクはあたしをギュッと抱きしめたまま、そう叫んだ。


「なのに……おかしいだろ! なんでお前が負けて帝国に行かなきゃならない。こんなの……間違ってる」

「アレク殿下、神の定めは絶対ですぞ。それに異を唱えなさるか?」


ヒース司祭長が厳しい声音で詰問してくる。


「神を冒涜なさるならば、破門ということに相成ります。ひいては王族の資格を失い、身分も剥奪されます。それでもよろしいか?」

「アレク……ダメだよ。あたしは帝国に……だから、謝って」

「嫌だ!」


アレクは決してあたしを離すまい、というようにますます力を込めて抱きしめてきた。


「おまえがいないなら、どんな世界にいたって意味がない。さくら……お前が帝国にゆくというなら、俺も帝国の民になる。ニホンへと帰るならば、俺もニホン人になる。
お前がいるなら、身分も地位も……何も要らない。
おまえの笑顔だけで、俺は幸せになれるんだ。
さくら、俺の幸せを願うなら、俺の隣にいてくれ!!」