「ばっっかじゃない?」

「……は?」


あたしの発言が頭に入らなかったか、お嬢様はポカンとした顔を晒してる。あたしはふん、と鼻を鳴らしてあげた。


「余計なお世話です。それに、アレクが勝手に会いに来るんだし。断る訳にはいかないでしょうが」

「そこを遠慮しなさい! 平民が盗人たけだけしい」

「アレクの心が手に入らないからって、八つ当たりやめてくれる? そこは自分の努力でどうにかするところでしょうが。
相手を排除すれば自分が選ばれると考える単純な頭なら、残念だけどアレクには選ばれることはないよ」


当たり前のことを話せば、貴族のお嬢様はカッと頭に血が上ったらしく、手にした扇を投げつけてくる。だけど、扇は届くけとなくあたしの手前で炎に包まれ燃え尽きた。


「“炎”……まさか、そんな。本当に?」


なぜかお嬢様は急に青い顔になり、ジリジリと後ずさる。だから、あたしはにっこりと彼女へ提案してみた。


「もしもバトルがご希望でしたら、今すぐお相手いたしますよ」


あたしがにっこり笑っただけなのに、お嬢様方は全員蒼白になってガタガタ震えてる。中には実際倒れた人もいた。


「い、いいえ! ご遠慮申し上げますわ。では、失礼いたします」


さすが育ちというべきか。お穣さまは優雅なお辞儀をして品よく去っていかれました。


……それにしても、とあたしは痛む胸を押さえながら思う。

性格はともかく、外見や身分はきっとああいう人がアレクに相応しいんだろうな。


みんな、すごくきれいだった。あたしみたいなちんちくりんとは大違いだ。


そんなことを考えてハッと本を手に持ち直す。


(なにバカなことを考えてるの! もともとアレクとあたしは……彼の側にいられる関係じゃないし)


「さ、頑張らなきゃ!」


自分を鼓舞するために顔をパチンと叩き、本を捲る。そして、その中に気になる記述を見つけた。