「だが、だからと言って本来関係ないおまえを巻き込んで負担を背負わせ責任を感じさせている。それが悔しく歯痒くてならない」


ダン! とアレクは近くの木の幹を拳で殴った。


「この世界のことはこの世界で決着を着けるべきなのに……無関係なおまえを巻き込んで……俺たちが不甲斐ないばかりに」


ギリギリ、とアレクは手のひらから血色が失われるほど、力を込めてる。彼の苦しげな表情で、どれだけ苦悩しているのか……すごくよくわかった。


あたしは、アレクの手にそっと自分の手のひらを重ねる。大きな手だなって……思った。


「ありがとう、アレク。あたしのことを一生懸命、いっぱいいっぱい考えてくれてたんだね」

「……だが、俺は」

「ううん、いいの。アレクがそれだけあたしのことを思ってくれた……それだけで十分。もしもあたしを人形みたいに扱ってたら、あたしだって何もしたくなかったけど。アレクはいつだってあたしをちゃんと見てくれてた。だから……助けたいって思える」


あたしは、やっとアレクに素直に気持ちを伝えることができた。


「ありがとう、アレク。いっぱい心配してくれて。あなただってたくさん頑張ってるのは知ってるの。だから……あたしもあなたを助けたい。あたしで良ければ協力したい。これは命令されたからじゃない、あたしの素直な気持ちだよ。強制じゃなく、自分で決めたことだから。何があっても後悔しないから」

「さくら……ありがとう」


ぎゅっ、とアレクがあたしの手のひらを覆う。大きな手のひら……でも、彼の手だけでは出来ることに限界はある。


あたしは、彼をほんのちょっとでも助けたい……そう決めた。


1ヶ月後、日本に帰るまで精一杯のことをしよう。