そして、アレクは湖で釣りを始めるし。ミケは猫なのに湖に入って猫パンチで魚を取り、アレクより立派な釣果を見せつけアレクを悔しがらせた。


あたしとパティさんは木の実を採ったり、花を摘んで楽しむ。こんなふうに穏やかに過ごすなんて、日本でもあんまりなかったな……と空を見上げた。


釣り上げた魚を焚き火で焼いて、パティさんが木の実でパンケーキのようなものを焼いてくれた。……ってそのバスケット。どれだけ物が入ってるんですか?


焼き魚と果実を添えたパンケーキで昼食を取ると、腹ごなしに散歩を提案されて。アレクと連れだって歩く。


その最中、アレクがポツリと漏らした。


「……1週間後、神託によりステルス帝国とのバトルが決まった」

「えっ?」

「カーライル地方を含めた、国境の領土を取り戻す戦いだ。国境の要となる土地で……ぜひとも取り戻したい」

「……」


アレクの意図が、わからない。


ステルス帝国との戦いをあれほど煽りながら、あたしには休めと勧めて。それなのに戦いに負けられないと言う。


「アレク……あなた、あたしに何を求めてるの?」

「………」


正面切ってアレクを見れば、彼は目を伏せてそのまままぶたを閉じた。


「本音は、勝ちたい。帝国にはこの何十年と辛酸を舐めさせられてきた。国民も経済も疲弊し、限界まで来ている。今度負けたらきっとアクスティア王国は崩壊へ向かうだろう」