「こら、ミケ! またイタズラして!!」
もぐらたたきの筐体に、いつの間にか近所ののら猫であるミケがどっかりと座ってた。
ミケは推定3歳のメス猫。名前の通りに三毛猫なんだけど、近所ののら猫の女帝として君臨してるんだ。
あたしが中1くらいの頃からミケはいろんな場所に出現してはあたしと遊んでる……というのは表向きで。その実あたしが遊ばれているだけな気がしないでもないけど。
今も、ミケはもぐらたたきのぬいぐるみを気まぐれにバシバシ叩いてる。見事な猫パンチだ。きっとミケがボクサーだったらチャンピオンになれたろうけど、あいにく猫にボクシングがあるとは思えない。だから、あたしはミケを退かせようと彼女の体に触れてみたけど。
その瞬間、いきなりもぐらたたきの筐体が光り始めた
「えっ……何これ!?」
《見つけましたわ……勇者様》
光の洪水が眩しくて目が開けられない最中、澄んだ水のような綺麗な女性の声が響く。
手探りで辺りの様子を探っていたところ、むにゅっと柔らかいものを掴む。その瞬間、フカッ!とミケが唸ったから、彼女の本体を掴んだらしい。
「ごめん、ミケ。でも、勇者って……なんかのゲーム? きゃああっ!」
突然、ふわりと体が浮いた。こんな体感型のゲームなんてあったっけ? なんて考えてるあたしは相当なのんびり屋だった。
次の瞬間――
信じられないことに、急速に体が落ちていったのだから。