お猫様が救世主だった件につきまして





空が、とても大きく広く見えた。

澄んだ青空にぽっかり浮かぶ雲が手が届きそうなほどに近くて、太陽のまぶしい光があたたかい。


眼下に広がるのは、アクスティア王国の領土。海に近く広がる緑と裾に広がる雪を戴く稜線。
キラキラと輝く湖面に国土を貫く川。白い建物が太陽の光に煌めいてる。 黄金の実りがさざ波のように穂を揺らしてた。


「きれい……」

「まだ、この辺りは被害が少ない。ステルス帝国から最も遠い地域だからな。だが……国境は酷いものだ」


アレクの沈んだ声で、先日出会った下町の男の子を思い出す。彼はわずか10歳で稼ぎ家族を養わなきゃならなかった。


……すこし計算を教えただけですごく喜んでた。もっと勉強したいって言ってたから、時間があれば通って教えてるけど。


ああいう笑顔がもっともっと広がるといいな、とあたしは思う。


「今すぐ全部はムリでも……少しずつ始めればいいんじゃない? 一度にってのは不可能なんだから、手近なところから。人間、欲張るとろくなことにならないっておじいちゃんも言ってたし」

「そうか……そうだな」


アレクの声に少しだけ明るさが戻って、ほっと息を吐いた。


「ついつい焦りそうになるが、出来ることから始めるしかないんだな」

「そうそう。それが一番。共倒れになったら元も子もないもんね!」


あたしがハハッと笑うと、アレクもフッと笑う。


「そうだな……良いことでも出来ることに限度はある。自分の分を弁えて、少しずつ進めるが最良だ」


そう話したアレクは、あたしの頭をぽんぽんと叩いた。


「ありがとうな……大切なことを気づかせてくれた。おまえが来てくれてよかった」