「姉ちゃん、もういいのかい?」

「あ、うん」


教会の入り口で待っていたドムくんが声をかけてきたから、あたしは返事をしたけど。ふと思いついたことがあって神父様に訊いてから、彼へと歩み寄った。


「ね、ドムくん。ちょっとお勉強してみない?」

「へ、 勉強?」

「うん。さっきみたいに悔しい思いはしたくないでしょ。だから、簡単な計算を教えてあげる」

「ほ、ホントか!?」


ドムくんはバッと勢いよく立ち上がり、目を輝かせながらあたしを見た。


「勉強、する! オレ、二度とあんなふうにバカにされたくねえもん。いつもいつも悔しい思いをしてきた。商人のやつら、オレ達がろくに数字も名前も書けないからって。
でも、勉強すれば言い返せる!バカにされたりしない。頼む! 勉強させてくれよ」


ドムくんがあまりに熱心に頼んでくるものだから、早くお城に帰りたかったらしいパティさんも折れるしかなくて。


結局――あたしは午後いっぱいかけてドムくんと近所の子ども達に計算を教えた。