お猫様が救世主だった件につきまして




「ありがとう……お水、使わせてもらって」

「いいって! 姉ちゃんのおかげで、久しぶりに母ちゃんに白いパンを食わせることができたしさ」


男の子……ドムくんはへへっ、と鼻を擦る。

まだ10歳の彼は病気のお母さんと2人暮らしで、少し遠い森で薬草を採りながら生計を立ててるらしい。


木造の平屋建ての室内は簡素なもので、お母さんが横たわるベッドも木の板が置いてあるだけ。汚れた布を何枚か敷いたものが布団がわりだった。


ドムくんも何日も洗ってない薄汚れ擦りきれたシャツと半ズボンに左右サイズが合わない靴という出で立ち。


なんだか、王宮で贅沢なおもてなしをされてるのが恥ずかしくて申し訳ない気持ちになった。


側溝に足を突っ込んだあたしは、汚れを落とすためにドムくん親子のお宅にお邪魔した。お母さんは眠っていたけど、買い物を済ませたドムくんが何もかも世話をしてくれて。足を水で洗い、何とか人心地がついた。


「へえ……もぐらたたきゲームのカラクリを見に来たんだ。サクラは変わってるよな」


世間話として本来の目的を話せば、ドムくんは面白がって案内を買って出てくれた。


「ここのカラクリは教会に置いてあるんだ。神父様に頼めば触らせてもらえるよ」

「え、ホントに?」

「うん。運が良ければバトルが見れるかもしれないよ」


思いがけず地元の人のツテを得て、あたしはどんなカラクリかと今からわくわくしてた。


「サクラ様……ほどほどになさってくださいね」


パティさんの注意は左から右へ勝手に抜け出してった。