今、私がいるのは近所にあるとあるゲームセンター。昭和50年代に建てられた、そこそこ大きな県道に面するお店。


両親も学生時代に遊んだことのあるゲーム機がそっくりそのまま残っているここは、幼い時から何一つ変わらない。おじいちゃんがよく遊びに連れてきてくれたここで、あたしはもぐらたたきゲームの楽しさを知った。


あたしが得点をする度に、おじいちゃんは大げさなまでに褒めてくれた。他にとりたてて得意なこともないあたしだけど、これだけは誰よりも負けないって自負がある。


もぐらたたきゲームに熱中しているのは、思い出深いという理由もあるけれど。日常のストレスやつまらない自分を忘れて居られるから……かな。


穴から顔を出すもぐらをハンマーで叩くだけのシンプル極まりないゲーム。友達は何が楽しいかといつも怪訝な眼差しを向けてくるけど、単純なものほど案外奥が深い。


一分間で叩いた得点を争うルールで、ようやく憧れの60点を稼げた。次は65点だ! とあたしは気炎を上げてハンマーを降り下ろした……んだけど。


あたしがハンマーで叩く前に、ピコンともぐらを叩いたヤツがいた。