「何だよ!」
突然、大きな声が聞こえてびっくり。振り返ると、10歳くらいの男の子が、中年男性を相手に怒鳴り付けてた。
「全然少ないじゃないか! 言い値は1グラフ8シリンだったろ!?」
「だから、それで正解だろうが。ちゃんと代金すべて払ってそれになる」
「ば、バカにすんなよ! おれが字が読めねえからって……たばかろうとしてるだろ! これ、ぜってえ少ないだろが」
男の子は地団駄を踏みながら、でっぷりした男性に噛みついてる。今にも掴みかかろうとしてるけど……。
周りの人たちは遠巻きに見て、我関せずと言った様子。こんなところだけは現代日本と似てるなって苦笑しながら、あたしは近づこうとすると。当然パティさんに止められた。
だけど、たぶん今ここでスルーしたら自分が嫌になる。お父さんもお母さんも、困った人がいたら助けなさいと言ってたし。
どうやら数字関連のトラブル。男の子が読めないと言ってたし、彼の代わりに多少計算すれば済む話だよね。
だから、あたしは2人に向けて声をかけた。
「ちょいちょい、お2人さんお待ちなさい。どうやら数字のトラブルらしいけど、あたしに言ってごらんなさい」
数学は苦手だけど、高校まで10年間数字と格闘を続けてきた。単純な計算くらい朝飯前ですよ。



