「皆、よく聞いてくれ! この国を救うべく、神が勇者を遣わして下さった。
今まではステルス帝国にいいようにされてきたが、もうこれで勝手にはさせない。勇者の協力あれば、必ずやかつてのアクスティア王国を取り戻すことができるだろう!」

「アレク様!」

「勇者様!万歳!!」


アレクの演説に人びとは歓喜し、周囲からの熱気にあてられそうになった。


「では、紹介しよう。我が国を救うべく現れた勇者を……」


アレクの手が私の肩に伸びて、もしや促されてるのかと一歩前に出る。こんな大勢の人の前で紹介されるなんてなかったから、緊張感が半端ない。


心臓が張り裂けそうだし、呼吸もおかしい。笑顔がひきつってなきゃいいけど。足……震えるな!


「は、はじめまして……あ、あたしは」


震え声で何とか頑張って話し始めた……のだけど。


アレクの手はあたしの体でなく、あたしが抱えてたミケの体を抱き上げて。


彼は、ミケを高く持ち上げ高らかに宣言する。


「紹介しよう。このお方こそ我が国を救うべく現れた、勇者ミケだ!」


……あれ?


あれれ?


呆然としたあたしは、ミケの逆鱗に触れて猫パンチされるアレクの姿を見守るしかなかった……。