保健室の鍵は空いていたものの、保健の先生はまだ来ていなくて、笈川くんから渡されたコットンを小さくして笈川くんに見えないように鼻に押し入れた。
このみっともない姿を笈川くんに見られてしまったという事実に涙が出そうになるのを必死に堪え
『笈川くん。もう大丈夫だから教室戻って?迷惑掛けちゃってごめんね。』
鼻の中にコットンが詰まっているから鼻声がなんとも羞恥を増幅させ情けない
『・・・。』
こんなに近くに話かけているのだから聞こえているはずなのに笈川くんは保健室の椅子に座ったまま動こうとしない。
密室の保健室に二人きり。
その状況に頭が理解した瞬間、つい今さっきまで情けないと思っていたのは何処吹く風。
笈川くんに聞こえてしまうんじゃないかって位に鼓動が脈打ち出す。
・・やっぱりまだ笈川くんのことが・・好きーー
だけど、今更だよね。
本当・・ーー今更

