白羽が私の名前を呼ぶ
静かに…ただ静かに
そしてその表情は
まるで仮面を被ったかのように真顔だった
さっきまで笑っていた白羽が嘘のように
思わずぞっとした
冬じゃないのに寒気がする
…コイツの真顔って
こんなに…怖かったっけ……?
「言わないでね
小谷さん
黒木さんと樹には…絶対
……言わないでね」
ゆっくりと
だけどハッキリ
白羽は私に響くように言葉を紡ぐ
私は無言で頷いた
まるで蛇に睨まれた蛙だ
私よりも弱そうなコイツに
まさか怖いと思う日が来るなんて……
「あっ!
小谷さん
あれってゴールじゃない?」
ぱっと
さっきまでの真顔が嘘のように
白羽は嬉しそうに笑う
「……小谷さん?」
「うん…行こうか!」
言わない
言えない
美夜と樹には…言えない


