内心パニックになりながら
俺はナースコールを押した
すぐに斗真の担当医である松永(まつなが)先生がやってきて
素早く対応してくれた
だけど他にナースコールを押した人がいたみたいで
俺はまだ咳の残る斗真とふたりきりになった
『ブーブーブー』
静かな病室内に響く携帯電話のマナーモード
病院内では電源を切るものだけど
この病室では特別に許可されている
入退院の多い斗真への病院側の配慮だろう
『…取らねぇの?』
斗真の携帯電話を顎で指しながら聞く
斗真は首を横に振った
『…見たくない…ケホッ』
『何を』
『…写真』
『写真?』
『…お兄ちゃんたちが
外へ出られない僕のために
色々旅行先で写真撮って
こうして送ってくれるの
見るのは楽しいよ?
お兄ちゃんたちの優しさだってわかってる
だけど…実感しちゃうから
本当は見たくないんだ』


