たまに斗真のお父さんやお兄さんに声をかけられ話して
帰れば静かになる
そんな温度差の激しい病室で過ごしていたある日のこと
俺は「あれ?」と思った
だけど気のせいだと思ってその時は流した
でもそれは気のせいじゃなかった
俺は気になって初めて斗真に声をかけた
『なあ』
『何?』
思ったより斗真の対応は普通で
不審がられると思っていた俺が馬鹿みてぇだった
『最近…
お父さんとお兄さんたち来ねぇな』
毎日誰かしら来ていたはずなのに
ここ1週間は誰も来ていない
昼と夜の温度差が前は激しかったのに
最近は一定だ
『最近父さんの仕事が忙しいみたいで
行けないってこの間聞いたんだ
お兄ちゃんたちは
仕事とか友達と遊びに行ったりしているから』
『…お前は行かねぇの?』
『僕は無理だよ』
ふっと笑った斗真だけど
俺は哀しく
まるで痛みに耐えるような笑みに見えた


