「なんかいいことないかなぁ……」 思わずか細い声で呟いてしまう。 こういう時だけ、「夜景はこんなに綺麗で、その中にいるあたしはなんでこうなんだろう」って思うのはずるいかな。 でも。 頭にどうしてもチラつくのは、斎藤課長と久志のこと。 彼女が言った言葉の意味が分かれば、少しはすっきりするのに。 千紗が、もう一度ため息をつきそうになった、その時。 「どうしたの? 今日は夜更かしだね」 ふっと声が降ってきた。 慌てて隣を覗いてみる。 仕切り板の隙間から、かろうじて見えたのは彼だった。