「んんー! 晴れてるっ」 千紗は、ベランダで、大きく一つ伸びをした。 向かいのビルの間から、もう朝日がピカピカと顔を出している。 「今日も1日、頑張ろっと」 大きく息を吸ってから、長い髪を持っていたゴムで軽くまとめる。 1LDK、10階のこのマンションに千紗が引っ越してきたのは一年前。 派遣だった会社に勤めて三年目、正社員として雇われたのがきっかけだった。 実家から一時間半かけていた通勤時間も、三十分とちょっとで済んだ。