今宵、君の翼で


「翼……見られてるよ?」


「見せてんだよ」


私の顎を掴むとキスしてきた。


唇も冷たくなってたのに、一気に温まる。


翼のキスは長くて、苦しくなってしまった。


「翼、苦しいっ」


少し唇が離れたと思ったら、今度は私を見つめてきた。

それはとても悲しい瞳で、ドクンと心臓が揺れ動いた。

こんな翼は初めて見る。


「美羽は俺から離れねぇ……よな?」


「え?」


「あ、いや。なんでもねー」


ふっと苦笑いを見せて私から離れた。


何?今の……

翼らしくなくて、心配になる。


「翼ー! ちょいこっちきてー」


遠くから翼の友達が呼んだので、翼は手を挙げた。


「わりぃ、ちょっと行ってくる」


「あ、うんっ」


翼の後ろ姿を見つめていた。

さっきの悲しそうな瞳は見間違いだったのかな……


『美羽は俺から離れねぇよな』


それって、どういうこと?