今宵、君の翼で



その声に顔を上げると、目の前に見覚えがある人物が立っていた。


「い…一場先輩」


押し倒された時の事が頭をよぎり、体が凍り付く。


あの時の手の感触、笑い声…いまだにハッキリと覚えている。


どうしてこんな時にこの人と会ってしまうんだろう。


「俺の事覚えててくれた?嬉しいねぇ。俺も可愛い子は忘れねぇよ?」


一場先輩は笑いながら私の目の前まで歩いてきた。


相変わらず目立つ格好をしていて、見るからにガラが悪いヤンキーで。


隣にいた村上くんの顔が見れない。


すると村上くんが私の腕を掴み、自分の後ろへと私を追いやった。


背が大きいから、すっぽりと村上くんの陰に隠れる感じになる。


「ぁあ?あんた誰?」


一場先輩の不機嫌な声が聞こえて再びドクドクと心臓がなった。


「同僚ですが。今仕事中なんで後にしてもらってもいーっすか?」


村上くんは動じることなく普通の声で言っている。