今宵、君の翼で




「美羽はもう私なんかいなくても平気…よね」



突然ポツリとそんなことを言われた。


「何言ってるの!?」


「ごめんね美羽…聞いてるかもしれないけど…お母さんもう長くはないの」


ドクン…と胸が痛んだ。


以前よりも細く小さくなった母の姿が、今にも消えてしまいそうで。


私は何かプツリと切れたように、涙が溢れ出てきた。


「お、お母さん…」


「美羽…ごめんね…」


私を抱き寄せ、ぎゅーっと抱きしめてくれた。


母の温かなぬくもり、これが消えてしまうなんて信じられない。


少し前までは、一人でも生きていけると思っていた。


でも…やっぱり私は母が大好きだし、側にいてほしかった。


やっとわかりあえたと思ったのに…


どうして運命は残酷なんだろう。


「美羽…お父さんの事、許してあげて」


私を抱きしめながら、耳元でそうつぶやいた。


母は父の事を知っていたの!?


「豪壮の事を考えると許せなかった時もあった。でも…お父さんだって一人で沢山苦しんでいたはず。どうしようもなかったの」