「そんな!じゃあ、お兄ちゃんをひき殺した犯人は誰なの!?」
父が力なく俯く。
「あいつらは私に、ひき殺したのは柊木翼だと言った。だから美羽が付き合っていると知って怖くなったんだ。この事が美羽にバレるんじゃないかと思ってな…」
「だからこの前あんなに反対して….」
「証拠としてひいた直後の写真も渡されたがあれは加工されたものだとあとで気づいたんだよ。私が色々調べた結果、犯人は幹部の奴だった。本当に…私は情けない男だよ…ドナーは見つからないまま金だけ奪われ、脅され…息子も亡くし…私は…私は…」
その時初めて父の涙を見た。
お兄ちゃんが亡くなったときも気丈に振舞っていた父。
険しい顔をして、厳しいことしか言わなかった父。
冷たくて、心なんてないんじゃないかと思っていた。
そんな父が、今目の前で嗚咽を上げながら泣いている。
「それなら…そんなに後悔しているのなら…自首してよ」
お兄ちゃんは二度と生き返らない。
お母さんだって…変な事考えたくないけれど、もう時間がないかもしれない。
私達家族が望んでいることは、きっと真実を公にすることだと思う。
例え父が捕まってしまうことになっても。
父はゆっくりと私の方を見た。
涙で濡れた父の目がまるで別人みたい。



