今宵、君の翼で




私から手紙を奪い取ると、荒々しく手紙を開いた。


そして一通り読み終わる頃には、父の手が震えていた。


「お父さん、本当のことを話して⁉︎何があったのか。お兄ちゃんはただの事故じゃなかったでしょう⁉︎」


父はその場に立ち上がり、フラフラとどこかへ行こうとした。


その時、翼が私から離れて父の方へと走って行った。


そして父の目の前に立ち、頭を下げた。


「どうか、本当の事を話してください」


「おまえに何がわかる…」


「関係ない俺が出る幕じゃないのはわかってます。でも…美羽さんは家族の事をいつも思っていたんです。離れていた時もいつも家族の事を気にかけていた。お兄さんの死もずっと受け入れられなくて墓参りもできずにいたんですよ」


翼…


私、あまり家族の事口にしてなかったのに…


翼はわかってくれていたんだ。
私の本当の気持ち。

奥底にあった、父も母も気づかなかったこの思い。


父は少しの沈黙の後、小さく鼻で笑った。