「旦那さまは凄腕のお医者様ですからきっと大丈夫ですよ!詳しいことはあとでお話していただけるそうですし…」


お父さんがお母さんを診ているなら大丈夫だと信じたいけど…


梶原さんの言っていた通り、父は腕が良い内科医で手術も数多くこなしてきた。


でも…今は父を信用できないでいる。


隣にいた翼が私の右手をぎゅっと握ってくれたから気持ちを落ち着かせることができた。


「大丈夫だ、絶対」


何度もその声が私の鼓膜の中でこだました。

翼の声は私の心を優しく撫で、包み込んでくれているようだ。


しばらくして、診察室から父の姿が出てきてどきっとした。


そしてこちらに気づき、驚いた顔をしている。

そうだ…翼も一緒にいるから…

ゆっくりと私達の方に向かって歩いてくる父は、自分の父親じゃないみたいだった。


兄の手紙を読んでから、父親だとは思えなくて。


そんな父に、横にいた翼は立ち上がって深く頭を下げた。