今宵、君の翼で



翼がこっちを見て立っている。


私は一場先輩に押し倒された状態で、身動きがとれない。


こんなところ、見られたくなかったのに……




「なんだよ翼」



一場先輩が不機嫌そうな口調でそう言うと、翼の口元が緩んだ。



「そんなやり方じゃ嫌われますよ?」



「は!?」



「泣いてるじゃないすか」



翼はツカツカと私たちの目の前まで来て一場先輩をどかし、私の手を引っ張った。



「何すんだよ!?」



「やっぱ先輩にこいつは無理なんで」



「はぁ!?」



ワケがわからないという顔をした一場先輩をその場に置いて、翼は私を玄関の方へと連れて行った。


振り返ると、さっき翼と一緒にいた女の子も驚いたような顔をしてこちらを見ている。


女の子の服が乱れていなくてほっとした。



玄関を出てエレベーターに乗り込んだ。



予想外の出来事に、戸惑ってしまう。