今宵、君の翼で


一場先輩は私の正面に座り、項垂れている私の顔を覗きこんだ。



「しかし……すげー可愛いな。翼こんないい女と付き合ってたなんてなぁ」


帰らなきゃ……


でも、どこに?



「ねぇ、名前教えてよ」



私には帰る場所がないのに


どこに帰るっていうの?



「口きけねぇーのかよ?」



思いっきり腕を強く掴まれた。



「痛っ!」



「しゃべれんなら返事しろよなー?」



一場先輩は少し怒ってるような感じがして、怖くなった。



「か、帰ります!」


「ちょい! そりゃないでしょ」


更に腕を強く掴まれた。



「痛いっ! 離してくださいっ!」


「離すわけねーじゃん。翼の事なら俺が慰めてやるから」


「結構です!」


「翼だって今隣の部屋でやってんぞ?」


「え……」


「だから俺らもさぁ」



一場先輩の顔が近づいてきた。