あれは去年の1月のことだった。


突然兄が交通事故で他界した。


目撃者によると、兄は青信号の横断歩道を歩いていたところに一台のバイクがブレーキも踏まずに突っ込んできたらしい。


バイクも横転したが、すぐに起き上って姿をくらましたと。


今も犯人は逃走中のまま。


両親は正気をなくし、家の中はめちゃくちゃになった。


3つ年上の兄は優秀で、父の跡を継いで医者になる予定だった。


私は成績も悪いし、いつも親に迷惑かけてばかりで。


真面目な兄とは正反対の人間だった。


言葉にはしないけど、私の方が死ねばよかったのにと親は思ってるかもしれない。


私を見る両親の冷たい視線が、すべてを物語る。



私の家は、あの事故の日から時が止まっている。


動くことは2度とないかもしれない。



私は兄の代わりにはなれない。


どうやっても、お兄ちゃんに勝つことはできない。